愛に溺れる

早朝

祖父母が同じ病気で
同じ頃に亡くなってしまってから

私は父を求めた。



『今日は…いつ帰るの…?』



『さぁな、』



素っ気ない返しをされ
行ってきますもなしに父は仕事へ。



私は玄関から台所に向かう。


台所にあるテーブルには
朝食のパンがある、焼きそばパン



好きでも嫌いでもないが
私の朝食であるからに食べるしかない



椅子を引き腰掛けると
静かに無音の空間で袋を破る音がする。



麦茶は先ほどからあるので
喉が乾いても大丈夫だ。



『いただき…ます。』



私はパンを食べ始める…ゆっくり
味わうことを忘れずに



本来ならここでお母さんやお父さんと
そして祖父母と一緒に食べるんだと思う…



笑いあったりして手作りのご飯を…。



何度夢に思ったことだろう…
何度挑戦して挫折したことか。



作れるようになるまでまだ早い私
一緒に食べるには早く出ていく父



笑い合うにはもういない祖父母
手作りするには旅立った母の存在



夢物語…である。



朝の4時、今の時刻。



いってらっしゃいって
言うために早く寝て早く起きる。



今日は言えなかったけど…
いつもは『あぁ。』って言ってくれる。



反応があるだけで私は嬉しい


何もないよりずっとずっといいもの。



小学校に登校するまでまだ、まだ
時間は沢山あるからそれまで勉強するのだ。



勉強は嫌いではない。



頭に知識を詰め込んで。



寂しいって事を埋めるために…
誰もいないことで集中できると
言い訳するために…。



そう意気込んで
ノートを広げる…

大切なところに赤い印


いつもここだけ覚えたら
楽なのにって思う。



そんな簡単にいくわけないのにっ



自分にいつも笑ってしまう…


そんな寂しい朝を今日も送っている。




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