【完結】遺族の強い希望により
ではジェシカのことを忘れたのか、彼女に対する気持ちは妻へのそれに劣ったのかと聞かれれば決してそうではなく、彼女の存在は常に彼の心の片隅に存在し続けていた。


何もかもが初めてだった、加速度的に燃え上がり昇華し切れぬままに終わった恋だから、もしかしたら思い出は美化され実態以上に神聖視しているだけなのかもしれないが。

冷静にそう分析は出来ても、自分の本心を本当の意味で客観視することは彼には出来ない。


あの身を切るような別れから20年以上も経った今、彼女からよもや再び連絡が来ようとは、微塵も予想していなかった。


「何故、今になって……」


手紙の内容に、隆司の手は震えた。
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