【完結】bitter step!
「ただいま」

廊下を歩く足音も、ドアを開ける音も全く聞こえなかった。
だから、突然かけられたその低くて穏やかな声に、ボクは危うく声を出しそうなほど驚いた。

心臓に悪いから足音立ててください。
っていうクレームは、口に出さずに飲み込む。


ホワイトボードの向こうから顔を出した先輩が、にこりと笑っていた。

「お待たせ。ミルクティーとウーロン茶」


ボクと美紗にそれぞれペットボトルを渡す先輩は、何故か1人で。
美紗は流れるような所作でお礼を言ってそれを受け取ったけど、ボクは手を出しかけたまま止まってしまった。


「あれ……純平は?」

「もうすぐ来るよ」

そう言って最初と同じ位置に座った彼の言葉通り、すぐに廊下をバタバタと走る音がこだまする。
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