睡恋─彩國演武─
そんな千霧の様子に、呉羽はちいさく息をついた。
それに反応し、不安げな表情を浮かべると、彼は優しく微笑み、横へ腰を下ろした。
「そんなに寂しそうな顔をしないで下さい。貴方を置いて何処かへ行ったりなんてしませんよ」
千霧の顔が紅潮する。
「わかっているよ……」
いじけているのか、照れているのか、千霧はそっぽを向いてしまう。
千霧は気高く高貴でありながら、優しく、時おり年相応の表情を見せる。
無邪気で、可憐な……。
「あの、あまり見ないで欲しいのだけど……」
視線に気付いて、振り返った千霧は、不機嫌そうに眉を寄せた。
「すみません、つい……」
彼は苦笑しながら髪を掻き上げた。
千霧は呆れたような溜め息をついて、上衣を脱いだ。
釦(ぼたん)をいくつか外すと、白い素肌が露になる。
千霧は汗ばんだ身体を丁寧に拭いていった。
一方、呉羽はその体から目を離せないでいた。
間近で見れば、無性というのがどんなに重いことかが、彼の胸を痛めた。