睡恋─彩國演武─
その容姿はうまく表現できないが、やはり“異形”なのである。
そして、隠されていた素肌には、幾つもの傷痕があり、それらは全て刃物で斬りつけたような、痛々しいもの。
「傷が、気になる?」
視線に気付いていたのか、千霧が問いかける。
「……はい」
控えめに返事をすると、千霧はいつものように苦笑した。
「兄様寄りの家臣や、母様から受けたんだ。無性の子供など本来は忌んで当然の身だからね……」
まるで遠い昔のことを振り返るように、淡々と語る。
「力ない子供をどうにかするのは、容易いこと。だから私を嫌うものは皆、なんらかの理由をつけて私を傷つけた。そうでなくとも……」
そこまで話して、口をつぐんだ。
見れば、わずかに唇が震えていた。
「無性の体に興味を持って、よからぬことを企む好き者もいるからね」
瞼を伏せて、静かに告げる。
やがて重苦しい静寂がやってくると、千霧が明るい声を出した。
「呉羽が暗くなることは無いでしょう?それに昔の話だもの。……今は、自分の身くらい守れる」
もう子供じゃないから、という千霧の言葉を打ち消すように、呉羽はその小さな身体を抱き締めた。