睡恋─彩國演武─
「もっと早く貴方を見つけるべきだった──…」
そう言って、強く強く、千霧を抱き締めた。
「──泣いてるの?」
白く冷たい指が、頬を濡らす涙を拭う。
「嘆いても過去は変わらない。でも、未来は変わる。貴方と会ったことで、既に私の未来は変わっているから。──だから、いい」
千霧が呉羽に置く信頼は、彼が思うよりずっと大きい。
己を責めてはならない。
己を嘆いてはいけない。
「……これからは私が、必ず貴方を守りますから」
千霧は護られるのを嫌った。
人を頼るのは弱者のすることだと、そう、考えていた。
けれど、呉羽の真っ直ぐな瞳に見つめられると、自分が小さく、弱いものに見えて。
この青年になら、護られてもいいと思ってしまう。
「──ありがとう」
呉羽は、千霧と目が合うと照れたように笑った。