睡恋─彩國演武─
「……知っているの?」
呉羽の様子を伺っていた千霧が、尋ねてみる。
由良の喉が、その先の言葉を待つように音を立てた。
「玄静殿──彼は、紛れもなく玄武です」
本来なら、四聖が見つかったことを喜ぶべきであるが、千霧の表情は曇っていた。
「でも、玄静殿は既に亡くなっている。……力を借りることは望めない」
四聖が全員集まってこそ、千霧は龍になれる。
それゆえ玄武なくしては、それは叶わない。
「大丈夫ですよ。玄武ならちゃんと居るじゃないですか」
呉羽は困惑する由良を見据えた。
「四聖も龍と同じ。己が命の終わりを知った時、己の代わりを見つけるまでが、その使命です」
「由良が……玄武?」
確かに、由良が玄武だとしたなら特殊な能力があってもおかしくない。
彼の『癒す力』。
由良は「気を流す」と簡単に言っていたけれど、通常の人間ならば何年も修行を積まなければ無理な話だ。
「あ、あのぅ……」
さすがに真顔で長々と見つめられているのには違和感を感じたようで、由良が困ったような声を上げた。