睡恋─彩國演武─

「……春牧(しゅんぼく)」


憎々しげに、由良はその名を唱えた。


「あれはこの城の、召し使い達の取締役です。……王がお呼びのようですね。参りましょうか」


「……月読、少し待っていて」


月魂の鞘をを腰から外し、寝台に乗せた。

安易に武器である月魂を手放すのは多少はばかられるが。

代わりに暗器をそっと懐に忍ばせる。


「千霧様、皇子であること、悟られぬようお気をつけ下さい」


呉羽が耳打ちすると、千霧は静かに頷いてみせた。

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