睡恋─彩國演武─
「由良とは随分と仲が良いじゃないか」
悪寒が走り、抵抗を止める。
「まぁ、見れば見るほど美しいこと」
春牧が下卑た笑みを浮かべながら千霧を締め付ける。
「ぐ……」
体が酸素を欲して、無意識に手を伸ばした。
「あやつは何度も同じ間違いを繰り返す。弟を助けられなかった憐れな兄は、己を責め続けてるってわけだ」
「──大切な人を失って、平気でいられる者などいない」
「怖い怖い。……空良は生意気な奴だったんだ。だから私が王に贄として推したのさ!」
「なん、だと──…?」
この女のせいで、空良が生け贄にされた?
人の命を、心を、なんだと思っているんだ──!
怒りと、悲しみ、そして憎悪が溢れてくる。
人をここまで憎んだことが、かつてあっただろうか。
宙をさ迷っていた腕が、袖口から素早く暗器を取り出し、春牧の腕に向けて振りおろした。
「あぁあぁああぁぁあ!!!」
濁った声と共に、切り口から小さく飛沫が飛び出した。
その隙に力の緩んだ腕の枷から脱し、距離をとる。
「由良の哀しみがお前にわかるか?由良の痛みが、お前に──…」