睡恋─彩國演武─
神官達が千霧を祭壇の中央へ無理矢理に押さえつける。
「く……っ」
地に顔を付ける屈辱。
足元の千霧を、春牧は嘲るように笑った。
「それでは、剣舞の奉納を」
春牧が言うや、祭壇の中央へと巫女と思わしき一人の少女が歩み出た。
美しい流れるような長い黒髪が、白い衣装に映える。
少女は、楽の音に合わせて手にしていた剣を高く掲げた。
蒼く光る、神の剣。
「──あれはッ!」
月魂、と気付いたのは呉羽だけで、千霧は押さえられているため気付かない。
艶やかな舞に、誰もが目を奪われていた。
彼の顔色が変わるのに気付く者などいない。
少女が回る度に、ふわりと衣が舞い上がり、髪が宙を踊る。
剣は何度も空を斬り、やがて白王の前へと突き出される。
「この顔を憶えているか?」
ずぶり、という音と共に、少女の仮面が顔から剥がれ、王の腹からは血が滲んだ。
真っ赤な瞳と、短く白い髪。
……由良と同じ顔。
紅を引いた唇が残酷に笑うのと、春牧が叫ぶのは同時であった。
「白王様ぁあぁあ!」
春牧が取り乱し、神官たちも騒ぎ始める。
千霧は隙を見ると神官を殴り付け、呉羽に駆け寄ると、倒れた神官から剣を奪った。