睡恋─彩國演武─

「神官達は操られているだけです。脩蛇を倒せば、元に……」


「そう。なら傷付けないよう、全力を尽くす」


二人を囲む神官の数は、ざっと八人。

千霧は呉羽を庇うように立つと、剣を振り上げた。


「はぁああ!」


──重い。

やはり自身に合わない剣は使い物にならない。

剣に気を取られている神官の腹を蹴り上げ、道を拓く。
由良の所までたどり着けば、月魂で呉羽の呪詛を祓うことができるはずだ。


亡者のように群がる神官を、傷付けないように手を抜きながら、その並外れた体術で確実に減らしていく。


「はぁ……はぁ……」



さすがに数が多い。

息が上がって、千霧の動きが僅かに鈍る。

疲れを知らないかのような相手の動きに、次第に遅れをとり始めた。


「……くっ!」


決定的な打撃を受け、千霧がふらついた一瞬、待っていたかのように一人が剣を振り下ろした。


(──避けきれない)


そう悟った、その時。

目前で金属音が弾けた。

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