睡恋─彩國演武─

祭壇の上で自分を見つめている、仮面をつけた兄。

脩蛇に対抗しうる力がある二人ならば、助け出せるかもしれない。


「千霧様と呉羽殿なら……由良を……」


空良は水を具現化させた剣を握り締め、走り出した。


「たぁあぁああっ!」


由良へと、向かって。


全ては、大切な兄の為。
誰よりも、大切な人。


「由良の中に残る陰の気を浄化したまえ……!」


由良の頭上から真下に向かって剣を落とす。

それは一瞬の出来事で。


由良の仮面が、ぱっくりと二つに割れる。


「空……良……」


名前を、呼んで。
空良の、泣きそうな笑顔。


昔からそうだ。


空良は一番嬉しいとき、こうやって笑う。


倒れそうになった由良を、空良が抱き止める。


「おかえり、兄さん」


閉じた瞼に、空良の涙が零れ落ちた。



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