睡恋─彩國演武─
《ガァアァア!!!》
脩蛇の雄叫びが、地響きのように神殿に伝わる。
陽の気が、遂に弾けたのだ。
《己……忌々シキ陽ノ気……白虎、コレガ狙イカ……》
「さぁ、どうでしょう?」
脩蛇の身体から光が放たれ、腹の辺りが一層膨らんだかと思うと弾け飛んだ。
肉片と血が、辺りに飛び散る。
呉羽の頬に、飛沫となった鮮血が伝い、それを舌で舐めとると、仄かに苦い。
脩蛇の残骸の中に、千霧の姿が浮かび上がる。
光に包まれ、紅く染まって。
「はぁ……はぁ……」
千霧は肩を上下させ、ゆっくりと立ち上がった。
「異形が異形の命を奪う……なんと醜い争いか」
一歩、一歩、自分の存在を確認するかのように歩き出す。
陽の気を絞りだし、千霧の心身は疲労していた。
身体が鉛のように重い。
「千霧様、掴まってください」
呉羽が手を差し出すと、千霧は素直にその手を取った。
小さな震えが伝わってくる。
「それでも……私、間違ってなんかいないよね?これで……良いんでしょう?」
「ええ、白樹は救われました。いつでも貴方は正しい。もっと自分を信じて下さい」
「……そう……だね」
脩蛇から離れると、眠っている由良を連れた空良が待っていた。
「今までありがとうございました。僕はここでお別れみたいです」
「どうして……?」