睡恋─彩國演武─
空良は脩蛇を指差すと、苦笑した。
「僕は、異形です。魂が脩蛇に囚われていただけ。脩蛇が浄化されるなら、僕も一緒に逝きます」
「……貴方の望みは、叶ったの?」
「ええ。叶いました。僕は、兄さんを苦しめた脩蛇と、春牧に復讐がしたかったんです。白王をそそのかしたのは春牧……あの人は僕が始末します」
空良は由良に視線を落とすと、涙を流した。
「兄さんを……玄武を、どうかお願いします」
空良の瞳からきらきらと流れる涙が、由良の頬を伝い落ちてゆく。
由良も泣いているかのようで。
「誰にも由良を傷付けさせないって、約束する」
「……ありがとう、ございます」
空良は千霧に由良を預けると、漂う水で春牧を捕らえ、束縛した。
「えぇい!離せ!離さぬか!!」
「悪く思わないで下さいね……貴女が生きてると兄さんが辛い思いをしますから。僕も散々お世話になったし──…」
空良は立ち止まる千霧達を見ると叫んだ。
「……神殿が崩れます!白王を連れて早く此処から脱出してください!」
倒れている白王を呉羽が抱えると、出口へと走った。
揺れと共に天井が崩れ、岩が頭上から降り注ぐ。
春牧と空良の姿は、やがて埋もれ、見えなくなっていった。