睡恋─彩國演武─
アイの額から汗が流れ、相当な精神力を使っていることがわかる。
模様が全て退いた頃には、千霧の熱もおさまり、吐息も穏やかになっていた。
「……もう大丈夫だよ。あとは安静にしてればよくなる」
「今のは──」
「火の気を集めて、内側から毒と呪詛を焼いたの」
アイが右の手のひらを返すと、黒いものがベッタリと付いていた。
「なんですか、それ……」
恐る恐る由良が質問すると、アイは拳を握った。
「呪詛の塊。こんな強烈なのが身体に入ってたら、普通の人間はすぐ死んじゃうよ」
こびりついたソレを桶に入っていた水で綺麗に洗い流すと、アイは溜め息をついた。
「あの、さ……白虎と玄武が集まってるってことは、もしかしてこの子──龍?」
「ええ。貴方なら言わずともわかっていたのでは?」
アイはもう一度、今度は深く溜め息をつくと立ち上がった。
「──厄介ごとは御免だよ。その件についてはアタシを巻き込まないでね。部屋はしばらく貸してあげるけど」
不機嫌そうに吐き捨てると、そのままアイは部屋を出ていってしまった。