睡恋─彩國演武─

アイの額から汗が流れ、相当な精神力を使っていることがわかる。

模様が全て退いた頃には、千霧の熱もおさまり、吐息も穏やかになっていた。


「……もう大丈夫だよ。あとは安静にしてればよくなる」


「今のは──」


「火の気を集めて、内側から毒と呪詛を焼いたの」


アイが右の手のひらを返すと、黒いものがベッタリと付いていた。


「なんですか、それ……」


恐る恐る由良が質問すると、アイは拳を握った。


「呪詛の塊。こんな強烈なのが身体に入ってたら、普通の人間はすぐ死んじゃうよ」


こびりついたソレを桶に入っていた水で綺麗に洗い流すと、アイは溜め息をついた。


「あの、さ……白虎と玄武が集まってるってことは、もしかしてこの子──龍?」


「ええ。貴方なら言わずともわかっていたのでは?」

アイはもう一度、今度は深く溜め息をつくと立ち上がった。




「──厄介ごとは御免だよ。その件についてはアタシを巻き込まないでね。部屋はしばらく貸してあげるけど」



不機嫌そうに吐き捨てると、そのままアイは部屋を出ていってしまった。


< 159 / 332 >

この作品をシェア

pagetop