睡恋─彩國演武─
心配そうに千霧を見つめていた由良が、ふいに顔を上げる。
「──千霧様が龍で、呉羽様が白虎、アイさんが朱雀で、俺が……玄武?」
状況を理解しようとしているのか、由良は頭を抱え込む。
「──俺は、変身したり出来ないのに、本当に玄武なんですか?」
投げ掛けられた小さな疑問に、呉羽は微笑むと由良の隣に座った。
「由良は人として生まれたから、できなくて当然なんですよ」
「……?」
「由良の場合は特別ってことなんです」
呉羽は優しく微笑んで、由良の頭を撫でる。
初めてのことに由良は赤くなったが、嬉しそうに笑った。
「空良が、言ってたんですよ。玄静殿は空良と由良の二人に、同じように力を与えた。──つまり、玄武は二人いて、そこから異例ってわけですね」
「……異例、かぁ」
呉羽は苦笑すると、千霧の頬に手を当てる。
「千霧様だって、最初は由良と同じように、迷ったり、戸惑ってましたよ」
「え?千霧様が……ですか?」
「ええ。千霧様の場合は、お立場が複雑すぎる。異形の第二皇子として王宮では腫れ物扱いされ、貴妃様の自殺を目の当たりにし、そして、自分が龍であると知った……」