睡恋─彩國演武─
「運命に抗おうかな……ってね。千霧がここで死ねば、僕の未来は変わる」
藍の瞳が、妖しく揺らめいた瞬間、彼は両手に炎の玉を作った。
「金(ごん)と交わり、この地に結界を成さん!」
炎を宙へ放り投げると、三人を囲うように、炎が円状に広がり壁となる。
「廓の奴等に迷惑かけるのは本望じゃないんだ」
涼しげな表情の藍は、さらに火力を増してゆく。
「──火傷しちゃうよ?」
耐えがたいほどの熱。
皮膚が焼けついてしまいそうなほどに。
千霧と呉羽の苦しむ姿を眺めながら、藍は冷ややかに微笑んだ。
「私を殺せば、貴方は満足するの?」
千霧は一歩、藍と距離を縮めた。
彼に近づくほど、熱さが増す。
「満足……?ううん、違うね。君を殺して、運命が変わった瞬間に、僕は本当に満たされるんだ」
藍の両手に炎を纏った圈が現れ、彼が千霧に向かって素早く斬りつけた刹那──
金属音が炸裂し、藍が悔しげに舌打ちした。
「千霧様に手出しはさせない──!」
千霧に向けられた刃を、呉羽が大剣で受け止めた。