睡恋─彩國演武─
藍は抵抗もせず、剣を持つ千霧の手を引き寄せ、苦笑する。
「終わりにして。全部」
その手を握ったまま、藍は力を込めた。
千霧は必死に首を振る。
「駄目、嫌だ!」
だって。
終わりにしたら、藍は永遠に救われない。
「早く!──呉羽を傷付け、君を殺そうとした僕が憎いだろ?刺せば、何もかも終わるんだ」
「あ……っ」
千霧の意思とは関係なく、藍の力によって、彼の腹部へ剣が突き刺さる。
「これは───!?」
藍が驚いたような顔をして、自らの腹部を覗き込む。
確かに刺さった。
感触もあった。
──なのに。
「痛く……ない」
千霧自身も驚いて、手元を見る。
月魂が、蒼く光っていた。
「月読……?」
『我は千霧の意思だけに従う。生命を傷つけなければ良いのだろう?』
千霧はうんうんと何度も頷き、月魂を握り締めた。
「く……くく……あははははッ!」
高笑いと共に、藍の体がぐらりと揺れ、千霧にもたれ掛かる。
同時に結界が破れて、辺りは何もなかったかのように戻った。
「本当に君は想定外だ。──こんな結末、僕には見えてなかったよ」
「……え?」
「運命、変えちゃった。すごいんだね、君って。それも想定外」
藍は微笑すると、静かに目を閉じた。
「──疲れた。少し休ませて」