睡恋─彩國演武─

「何処に行く気?」


「それは秘密」


朱雀に戻った藍の背に乗り、しばらく空を飛んでいたのだが、いきなり急降下されたので心臓が跳ねる。

目を固く閉じて重力に耐えていると、不意に静かになって藍の声がした。


「着いたよ」


目を開けると、足元には光の泉が広がっていた。


「これは……?」


「光泉っていうんだ。龍脈を通る五行の溜まり場みたいなものだよ」


目の前の光の輝きに圧倒される。


「龍や四聖の護る、彩國の核」


藍は光泉の淵まで歩いていくと、水面を覗いた。


「アイ」


名前を唱えると、光が一点に集まり始める。

それがしだいに形づくられ、人の姿となった。


「今までありがとう。僕、もう大丈夫みたいだから」


「藍──…」


「アイは、僕の中で眠っていて……?」


「うん……」


アイに向かって藍が手を広げると、彼女は光の粒になって彼の中に吸い込まれていく。


「アイのこと、置いていっちゃったからさ。……迎えにきたの」


男娼として生きるため、防衛本能で生み出したもう一人の自分。


「僕が男娼になったのはね、あそこには絶対に女が来ないから。客も好き者ばっかりだし」


それに居心地が良かったから、と苦笑する。

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