睡恋─彩國演武─

そして冷たい風の吹く白樹の方角を見つめると、彼はため息をついた。


「──僕のせいで、白樹の民が何人も死んだはずだ。最初からそうなることが見えていたのに、国を捨ててしまったから」


千霧は肩をすくめ、小さく首を振る。


「貴方のせいじゃない。……運命なんて、人は皆知らずに生きている。見えたものに縛られる理由なんてないんだよ」


それが正しかった、と彼を肯定することは出来ないけれど。

藍だけが全ての過ちを背負って苦しむのは、違う。


「定められた運命なんて、変える為にあるのでしょう?」


ゆっくりと顔を上げ、藍はまるで不思議なものでも見るように目を丸くした。

そしてすぐに、少しだけ不器用に微笑する。


「──やっぱり君は、想定外なことを言うね」


「そうかな?」


「うん、すっごく変わってる」


その時、藍はいつもより明るい笑顔を見せた。

子供ような、幼くて、ふわっとした笑顔に彼の心のうちが少しだけ覗けたような気がして嬉しくなる。



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