睡恋─彩國演武─

月魂を握り締めれば、汗ばんだ手のひらが不快で。

顔を手で拭い、異形を見据えた。


──哀しい、瞳。


『来るぞ!』


脳裏で月読の声が弾け、今度は避けるが、藍と逆方向に避けたため、千霧と彼は離ればなれになってしまった。

そこから異形の猛攻が続き、近づくことさえ出来ない。


(どうすれば──)


あの異形を倒すには、どうしたら良いのだろう。

焦りが生まれ、千霧は無意識に唇を噛んでいた。


「?……なんだ、これ……」


突然、周囲の景色が白く霞み始めた。


(霧……!?)


藍は辺りを確認するように見回す。

これで一層、異形の攻撃が避けにくくなってしまった。


「あーらら、結構……不味いかもね」


あの異形は相克。

それに加えてあの圧倒的な攻撃力なら、一瞬でも自分に隙ができれば確実に危ない。


(狙いはどっちなんだ……?僕か……千霧か……)


光泉を狙ってこの地に巣食うのなら、守護している藍が標的になる。

しかし、龍が共に居るとなれば別だ。

光泉よりも五行に満ちた存在ならば、喉から手が出るほど欲しいはずである。


< 213 / 332 >

この作品をシェア

pagetop