睡恋─彩國演武─
藍は炎で分身を造ると、自分と反対方向へと走らせた。
(頼むよ……!)
そちらに攻撃が集中すると、すかさず千霧の居る方へと向かった。
霧が濃くなり、視界が塞がれるが、藍は足を止めなかった。
立ち止まれば、待つのは敗北だけ。
彼自身の持つ、誇りを懸けた賭けだった。
「千霧!!」
名前を叫ぶと、小さく返事が返ってくる。
「藍!──どこ!?」
声が聞こえた方向へと走り、うっすらと見えた細い腕を掴んだ。
「千霧、こっちに──」
必死で走ってきたせいか、息が切れる。
「藍、ねぇ、どこ──!?」
「莫迦……ここにいるじゃ……」
ここに、居るじゃないか。
そう言おうとして、戸惑った。
コレハ本当ニ、千霧ノ腕カ──?
「ち……ぎり……?」
急に不安になって、腕を強く引いた。
《グェ》
不快な鳴き声と、気持ちの悪い湿り気。
「うぁっ!」
乱暴に振り払うと、二歩後退した。
疑心は確信へと変わる。
目の前に居るのは、千霧じゃない。