睡恋─彩國演武─
そんな千霧の姿を、遠くで唇を噛みながら見つめている男がいた。
彼は銀の髪を掻きあげながら、ますます歯に力を込める。
唇から血が流れている事など問題では無かった。
主が苦しんでいる、という事実の方が、彼には苦痛でならなかったのだ。
(傍でお慰めすることも出来ない私を、どうかお許しください──…)
藍がせっかく、嫌な役割を負ってくれたのだ。
ここで、むやみに動いて台無しにしてはならない。