睡恋─彩國演武─
その時、ツン、と背中をつつかれ、振り返ると笑顔の藍が手を振っていた。
「何してんの?ぼーっと突っ立ってさ」
「……千霧様の様子が心配なんです」
呉羽の肩越しに千霧を見ると、藍は眉を寄せた。
「気持ちはわかるけど。……僕たちは、あんまり龍に依存しないほうがいいんだよ──」
やけに低い声だった。
いつもの軽口を叩くような様子ではなく、藍は浮かない表情だ。
元気づけるように呉羽は笑った。
そして明るい調子で答える。
「──心配には及びませんよ」
藍は疑うような目の色で呉羽を見たが、すぐに頷いた。
「……ちゃんと信じてるよ?アンタのこと。一緒に生まれて一緒に育ったんだから、僕たちは兄弟みたいなものだもん」
「青龍も含めて……ですよね」
「うん。アイツは僕たちの味方じゃないかもしれないね。なんとなくだけどわかる。あ、僕たちの……っていうか、千霧のさ。立場だけなら、僕もそうかもしれないけど」
「……もし敵に回ったら、厄介な相手ですね、あの方は」
「そうだね。……青龍と千霧が敵同士だとしたら大変だよ。僕らにどうしろって言うんだろ」