睡恋─彩國演武─

だからこそ。

千霧と出会ってしまう前に、捜し出さなくてはならない。

龍を傷付ける対象は、全て“敵”だ。

たとえ、それが友だとしても。


「──千霧がもうちょっと頑固じゃなかったら、苦労しないのになぁ」


呉羽が苦笑いを返すと、藍も微笑した。

二人とも、それが千霧なのだと重々承知している。


「……部屋に戻ろうよ。此処にいる方が落ち着かない」


「そうですね。風も冷たくなりましたし。……貴方は肩が冷えるでしょう」


藍の服は、鎖骨が露出するような形になっているため、伴って肩も大きく露出している。


「冷えるどころじゃないよ。女物だからスースーするし」


「もしかして、アイの服しか持ってないんですか?」


「……っていうか、僕には男物似合わないから、あっても着ないし」


「探せばあるんじゃないですか?此処は商業が盛んですから、藍に似合うものくらい……」


「いいの。どうせ白樹に帰ったら苦しい服着なくちゃならないし、今くらい楽にしてたいんだよ」


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