睡恋─彩國演武─


都合よく呉羽に籠から出してもらって、自由になった気でいた。

──愚かな。


(私はなんと愚かなんだ……!)


逃げていただけだ。

旅をして、四聖を集めて、彩國さえ救えれば、それで全て終わると信じて。


「千霧様っ」


名前を呼ばれて、瞳孔が縮んだ。


「身体が震えてますよ!──これ!羽織ってください。もう、こんな寒いとこで何やってるんですか!?」


早口で説教しながら、由良は千霧に羽織を被せる。

それから天祢に気付いて、優しい口調で告げた。


「……あ、君も居たんだ。風邪ひかないうちに、暖かい部屋に戻った方が良いよ」


天祢は由良を見るなり頬を染め、一礼するとその場から走り去ってしまった。


「とにかく、一度部屋に戻りましょうか。何か温まるものでも作りますから……千霧様?」


「あ……うん、戻ろうか。呉羽と藍も、部屋にいる?」


「居ると思いますよ?二人とも、雨が降りだしたらすぐに帰って来ましたから」


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