睡恋─彩國演武─





雨が一層強くなった。

屋根を打つ雨音が、藍の部屋からはよく聞こえる。

普段なら煩い、とでも思ったのだろうが、今は少し違っている。


「朱陽に戻ろうと思う。──朱陽からでも異形の動きは把握できるし、いつ兄様が変異するかわからないから」


すんなりと出た言葉に、千霧は内心戸惑っていた。

あれほど躊躇っていたのに、今は迷いがない。






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