睡恋─彩國演武─

今の千霧にはその義務がある。

凶暴化した異形をどうにかして、これ以上の犠牲を無くすこと民を、守ること。

それが、自分の成すべきことではないのか。


「──千霧様。捜しましたよ、黙っていなくなるから」

「呉羽……」

いつのまにか銀色の虎が、千霧の横に座っていた。


「虎は鼻がいいんですよ?千霧様がどこに行っても、ちゃんと捜し出せますから」

胸が、熱くなる。

自分を見つけ出してくれる人など、居ないはずだった。

なのに、呉羽は見つけてくれた。

それがどんな理由だとしても、今はただ嬉しくて、思わず抱きついてしまう。

親のぬくもりを求める迷子のように。

ふかふかと、包み込まれているような感覚が心地よい。


「帰りましょう?私の背に乗ってください」

「うん……」

子供のような返事をし、遠慮がちにその背に飛び乗る。

「わぁ、千霧さま、お空飛んでる〜!」

童女の“飛んでる”という言葉に違和感を感じていると、呉羽が耳打ちした。


「今の私の姿は、千霧様、もしくは神力のある方にしか見えませんから」


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