睡恋─彩國演武─
*
その頃、千霧と呉羽は街の中を散策していた。
あまり外界に慣れていない千霧には、活気のある青城が新鮮なのだろう。
好奇心からなのか、いつもとは違って子供のように呉羽の腕を引っ張る。
呉羽は苦笑しつつも、滅多にない千霧の我が儘に付き合っていた。
藍は付き合うのが面倒だと言い、由良も自分の主人の我が儘に従って別行動だ。
「ねえ、あれは何の店だろう?」
「千霧様、あまり急ぐと人にぶつかりますよ」
「っ!」
どうやら呉羽の忠告は間に合わなかったらしく、千霧は何かに額を打ち付けた。
「あぁ、言わんこっちゃない……」
打った箇所を押さえて、千霧は顔を上げる。
「ごめんなさい!大丈夫ですか?」
見上げたところで、冷たい灰色の瞳と目が合った。
射ぬくような視線に、金縛りのような感覚をおぼえる。