睡恋─彩國演武─
憶えている。
けれど、それを知っているのは、自分ではない。
近くて遠い、もう一人の自分。
大地を見下ろし、守護していた存在。
記憶の果て、それを囲む四つの白い魂(たま)が見えた。
四聖、と唇が綴る。
「……白虎、玄武、朱雀、青龍……?」
自分の消滅とともに、四聖も消えてしまった。
「何か……思い出されたのですか?」
「うん……。記憶が流れ込んできた。四聖とか、呉羽の事とか──」
「……!」
耳元で名前を呼ぶ。
呉羽の、真の名前。
「白虎」
回した腕に、少しだけ力を込める。
呉羽は、一瞬だけぴくりと体を震わせた。
「……はい」
呉羽の声は、小さくて。
貴方は、その細い声で涙を必死にこらえていた。
回した腕から伝わってくる、小さな嗚咽。
見つけた。
無くした記憶の中に居た、優しい貴方を。
今はこんなに近くにいる。