睡恋─彩國演武─
自分の中に眠る誰かの記憶──。
それは泣いている。
千霧という名の器を通して、泣いているのだ。
でなければ、この涙と苦しい気持ちは一体誰のものなのだろう。
気持ちとは反対に、風を切る身体と同じように今の心は清々しい。
永く、永く胸に溜まっていた『闇』が、少しだけ晴れた気がしたから。
これから少しずつでも、闇を光に変えていけたら、変われるだろうか。
──過去と契りに囚われたこの身は。