睡恋─彩國演武─

不思議そうに腕輪を眺める千珠に、珀は微笑んだ。

それに気づいて、千珠も微笑み返す。


「大切にします」


『──こんな奴を信用するのか、珀。腕輪はこの世に一つしかないのじゃぞ』


「……?」


どこからともなく聴こえた声に、空耳かと耳に手を当てる。

その仕草が目に留まったのか、珀は千珠を凝視した。


『何じゃ、我の声が聞こえておるのか、こやつ』


「……!」


やはり空耳ではなかったようだ。

珀はため息をつくと、「お前にも聞こえるのか?」とめんどくさそうに言う。


「……あの、もしかして」


「あぁ……。仕方ないな」


珀は腰から剣を引き抜いた。

金の装飾がなされた、きらびやかな剣は、心なしか月魂に似ている。


「凰天(おうてん)という、陰の宝剣なんだ。……口の達者な神が宿っていてな」


きらり、と光を放つ刃に、うっすらと人の顔が映る。

それは子供のようにも大人のようにも見え、無邪気に笑っていた。



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