睡恋─彩國演武─
「珍しい奴じゃな。悪かったよ、冗談じゃ、冗談」
「──気になどしていません。本当に貴方が神なのか疑わしくなっただけだ」
「むっ!見かけによらず口が達者な奴じゃな……。まぁよいわ」
むすっとした顔を見て、珀が吹き出した。
「どうやら口は天照(あまてらす)の完敗だな。──千珠、お前はやっぱり面白い」
「……私とて相手が神でも腹を立てます」
ふい、と千珠が目をそらす。
頬が赤い。
「──怒ったか?」
「いいえ。でも、莫迦にされたようで悔しいです。……少しだけ」
千珠の紅い瞳に、長くて量の多い睫毛が影をおとした。
その様子は美しく、こうして見ると本当に男なのか疑わしいほどだ。
今まで色んな女を見てきたが、そのどれも千珠に劣って感じる。
(……男色ではないが、こんなことを思うオレは莫迦なのか?)
視線に気付いたのか、千珠は首をかしげて眉を寄せた。
「何か?」