睡恋─彩國演武─





夜の闇は人を不安にさせる。陰の闇もまた──同じ。


「融けてしまう」


誰かが、そう言っていた。
あれは誰だったか。

紅い瞳の、そうだ。


「蒐、こんな所にいたのか。──陰の夜は冷えるな」


「否」


「平気なのか?……慣れってやつかな。私はまだ苦手だよ。ここの空気も、空も」


「……」


蒐はただ、千珠の声を聞いていた。何故かそれが、とても懐かしく、心地好く響いていたからだ。


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