睡恋─彩國演武─

空気が冷たい。しかし、喉が焼けるように熱い。

千珠は唇を噛み締め、吐き気をこらえた。先ほどから、なにか得体の知れないモノが、身体の中に流れ込んでくる。


「異形は複数で村を襲ったらしいな。見てみろ、森のそこらで異形が殺気立っている」


「死臭を嗅ぎ付けたのか。──血の匂いがする」


先ほどからの不快感は、この風が運んでくる死臭か。

夜目にもわかる緋色に、天夢は向かっている。血の匂いは更に濃くなり、珀でさえ眉を潜めた。

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