睡恋─彩國演武─
「蒐、あまり癸火を脅かさないでやってくれないか」
「脅かしたつもりはないが」
「お前にその気がなくとも、現に癸火は怯えている」
千珠の影から、癸火は少しだけ顔を出して蒐を見ていた。
「珀様の許可が降りているのだ。今さら口を出すつもりはない」
蒐の視線が癸火を捉える。
「悪意がないなら良い」
蒐の放ったその言葉に、癸火は初めて強い口調で返した。
「悪意なんてあるわけない!千珠さまと兄さまはオイラを助けてくれたんだ!恩を仇で返す真似はしないっ!」
千珠は興奮して反論する癸火を落ち着けるように、彼の肩を抱いた。
そして蒐を見ると、眉を寄せる。
「蒐が心配するのもわかる。だが少し言い過ぎだ。──なぜそうまでして癸火に突っ掛かる」
「言っただろう、異形の匂いがすると。まだ消えていない」
「ではもう一度言わせてもらう。癸火は異形ではない。珀様も認められた!」