睡恋─彩國演武─
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母の助言通り、呉羽に話を聞いてみようと部屋を訪ねた。
「どうしたんです?」
相変わらずの笑顔で迎えてくれる呉羽。
その笑顔はいつ見ても安心する。
「相談があって……」
そう告げると、呉羽は部屋の中へ通してくれた。
「……と、いうわけなんだけど」
母と話したことを、全て打ち明ける間、呉羽は黙って頷いていた。
「残念ながら異形の言う『主』が何なのかは分かりかねます。ですが、彩國の状況についてなら……」
呉羽は額を押さえる。
そんなに話しづらい話なのだろうか。
「あのですね……」
やっと口を開いた呉羽の表情は、どこか沈んで見えた。
「……皇と約定を交わした龍には、目的があったんです」
龍というのは、死と再生を何度も繰り返す。
皇の祈りを聞き入れた龍は、自分の死が近いことを悟っていた。
……そして、それを利用し、生まれてくる千霧を『自分』の子供にした。
最初から、陽の国など龍にとってはどうでも良かったのだ。
全て、赤子の身体を手に入れる為の口実。
「貴方は皇ではなく、龍の子供として生を受けた。ですから……」
呉羽はその先を口にするのをためらっていた。
まるで、その言葉が禁忌であるかのように。