睡恋─彩國演武─
やがて呉羽は決意したように頷き、千霧とは視線を合わさぬまま静かに告げた。
「──貴方は人ではなく、龍なのです」
にわかには信じられないその一言に、千霧は唇を噛みしめて頷くことしかできなかった。
わかっていたのだ。
四聖のことを思い出した時、すでに。
それに、異形の声が聞こえるのも確たる証拠だ。
それでも認めるのを恐れていた。
認めてしまえば、自分が自分でなくなるようで。
「……貴方が半陰陽なのも、そのせいです」
まるで追い討ちだ。
皇の子でもなければ、人間でさえないなんて。
「……では、異形が凶暴になったのも……」
次から次へとわき出る疑問に耐えかね、千霧が口を挟む。
それも自分の出生と、関係があるのだろうか。
龍が関わることなのかもしれない。
「龍が消滅して、陽を護るものがいなくなったのが原因です」
突きつけられた回答は、千霧に『絶望』を感じさせるほど冷たいものだった。
「そんな……じゃあ、私は……」
何の為に、異形になったというのだろう。