睡恋─彩國演武─





──それから二日。


呉羽と沙羅の看護もあってか、千霧の体調も元に戻り、傷も徐々に回復の兆しを見せた。

「千霧さま、薬湯をお持ちしましたよ」

いつものように、千霧の元へと沙羅が薬を運ぶ。

「ありがとう。そこに置いておいて」

「はい。……あれ、何を読んでらっしゃるんですか?」

千霧の手には、分厚い本が抱えられていた。

表紙は色褪せ、ぼろぼろになっている。


「ああ、これ?彩國の歴史書だよ。……古いから、今は使われていない文字もある」

千霧はそう言って、本の隙間から出てきた埃をはたいた。


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