睡恋─彩國演武─
*
──それから二日。
呉羽と沙羅の看護もあってか、千霧の体調も元に戻り、傷も徐々に回復の兆しを見せた。
「千霧さま、薬湯をお持ちしましたよ」
いつものように、千霧の元へと沙羅が薬を運ぶ。
「ありがとう。そこに置いておいて」
「はい。……あれ、何を読んでらっしゃるんですか?」
千霧の手には、分厚い本が抱えられていた。
表紙は色褪せ、ぼろぼろになっている。
「ああ、これ?彩國の歴史書だよ。……古いから、今は使われていない文字もある」
千霧はそう言って、本の隙間から出てきた埃をはたいた。