睡恋─彩國演武─

千霧は再び本へと視線を落とす。

一言に歴史書と言っても様々な事が記されており、千霧が探しているのは“龍”についての伝承だった。

何か四聖を捜す手がかりを掴めればと思い読み始めたのだが、なかなか詳しい記述がされていない。


───四聖。


呉羽と同じように、彩國のどこかに存在するはずの、龍の守護者たち。

彼らを集めて真の龍とならねば、彩國は滅び、混沌の時代と化す。

「……私が……」

龍にならねば。

深い溜め息をし、千霧は本を閉じた。

彩國が破滅に向かうならば、それに抗う手段は選ばない。

──所詮この身は、神に捧げられた贄に過ぎないから。


千霧は寝台に寝転び、敷布に突っ伏した。

目に映るもの全て。

たとえそれが鮮やかな景色だとしても。

人でなくなったら、今とは違うものになるだろう。


……それを、美しいと思えるだろうか。




『……怖い──?』


いつのまにか、目の前が真っ暗になって、一人の少年が立っていた。

背丈は、千霧よりも少し低いくらいだろうか。

奇妙な仮面を付け、表情はわからない。


『龍……』


少年は、掠れた声で呟いた。


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