睡恋─彩國演武─
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その頃、呉羽は紫劉の部屋にいた。
皇との謁見は、基本的に広間でしか行われない。
それも、数人の護衛をつけての謁見だ。
しかし、今日は特別だ。
紫劉直々に呉羽を呼び出し、自室に呼んでのもの。
こんなことは滅多にないうえに、よほど個人的な話でなければ人払いなどしないだろう。
紫劉と呉羽は、向かい合うかたちで腰掛けていた。
「呉羽殿に、千霧のことで話しておかねばならぬことがありましてな」
紫劉は辛そうに眉を寄せて、そう告げた。
「……はい。全てお聞かせ下さい」
呉羽の率直な返答に、紫劉は頷き、静かに語り始めた。
「千霧と紫蓮の、出生についてのことだ──…」