空のギター
「みづきちゃん、ありがとう!この曲は俺も大好きなんで、精一杯歌わせてもらいます!!ただ、英語が下手なのは見逃して下さい……」



 苦笑混じりなSetsunaの発言で笑いが起こる。彼の歌唱力なら多少の発音の悪さは許してもらえるだろう、と司会者に言われ、Setsunaは「が、頑張りまーす……」と自信なさげに呟いた。

 少女の願いを叶えるべく、裏方のスタッフ達がBGM探しに動き出す。幸い音が見つかり、「アカペラでも良かったのになー」というRaiseiの意地悪な一言は会場の笑いを誘った。



「それでは早速歌って頂きましょうか。Setsunaさんからみづきちゃんへ、歌のクリスマスプレゼントです!Setsunaさん、お願いします!!」



 司会者の声に頷いて、Setsunaがマイクを口元へやる。女性ボーカルが歌うこの曲を、果たして“彼”はどんな風に魅せてくれるのだろうか。彼の七色ボイスを知っている観客や仲間・共演達は、知らず知らずの内に息を潜めていた。

 シャンシャンと鳴るベルの音(ね)が、雪景色を連想させる。十数秒の前奏が終わり、Setsunaは大きく息を吸った。歌の世界へ、みんなを誘(いざな)うために。
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