私の王様
*******
「‥‥ね、眠い‥‥」
「昨日、何かあったの?」
午前中の講義が終わり、大学の食堂で親友の美香(ミカ)と昼食を取るが、眠さのあまり好物のオムライスもほとんど減っていない。
「‥‥いや、何も」
社会人の御曹司とお見合いしてました――‥なんて言えるはずもなく。
昨日ほとんど眠れなかった、などと零してしまったことを心底後悔する。
「へー。何かあったんだ」
オムライスに夢中なふりなんてこの友人には通用しないらしい。
「で、何があったの?」
吐きなさい。
と言ってるであろう美香の笑顔が若干怖い。
視線をさりげなく逸らしてすっとぼけようと試みる。
ひ、冷や汗が‥‥
「とーこちゃん?早く吐いちゃったほうが楽よ?」
にこにこにこにこ――――
「‥‥じつは‥‥」
美香の笑顔に勝てたことは、ない‥‥
「あら、私の知らない間にそんなおもしろいことがあったのねぇ」
「どこらへんがおもしろいの‥‥」
洗いざらい吐かされた後の親友の第一声にぐったりとする。
「おもしろいじゃない。‥‥彼も、苦しいわね‥」
「え?」
ぽつり、と後半は小さな呟きとなって聞き取れなかった。