俺様上司は、極上の男!?
「副工場長だったって……言ってましたよね」


つい、言葉を差し挟む。


「工場長が定年間近のおじさんだったから、先頭に立っていたのが櫟課長だったみたい。そんで、課長は本社側とひとつ約束を取り付けたんだよ」


メグ子さんがとっておきの話をするみたいに人差し指をたてる。
私は気づけば胸元までお湯からはみ出し、身を乗り出していた。


「大ヒット商品の開発。工場閉鎖を免れるための条件だったんだって。それで櫟課長たちが開発したのが、去年の春発表になったランニングシューズよ」


覚えている。
足底の安定に徹底的に追求したソールを新開発したものだ。

近年はあえてバランスを崩すソールのシューズがもてはやされたり、軽さばかりが重要視されがちだった。
時代に逆行していると言われ、基本に戻りながらも、最先端の技術を詰め込んで世に送り出されたシューズ。
それは近年自社ブランドにヒットのなかったミサキガワシューズとしては、空前の売れ行きだった。

日本人の足にこだわってきたミサキガワシューズの至極の品だって、専門誌やランナーの評価は高かった。
一般紙でも去年のヒット商品のひとつとして取り上げられたはず。
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