腹黒王子の取扱説明書
俊は何も言わずに私が処理をするのを見ていた。

でも、この沈黙が怖い。

千田部長宛に来ている申請をクリックして承認処理をしていくと、横で見ていた俊の表情がだんだん冷たくなっていく。

やっぱり、時間がないとはいえ、俊の見てる横でやるのはまずかったか。

「これって、千田部長の仕事だよね?君が承認したのを彼は必ずチェックしてるの?」

声までもが空気を凍らせそうな程冷たい。

「……たぶん」

私は言葉を濁す。

俊が怒るのは当然だ。

これは千田部長の仕事だし、部下に承認処理をさせるのは間違っている。

「あのハゲ、海外の僻地にでも飛ばすか」

ブリザードのような目で俊が恐ろしい事を口にする。
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