腹黒王子の取扱説明書
「それから、来週は来客があるからホテルの手配を頼むよ。後でメールを転送しとくから」

そう言いながら、俊がコホッ、コホッと軽く咳をする。

「風邪ですか?」

「いや、ちょっと空気が乾燥してるだけ。じゃあ、頼むよ」

そうよね。こんな悪魔、風邪の方が逃げるかも。

俊が椅子から立ち上がり、専務室を出ようとする。

彼の後ろ姿をじっと睨み付けていると、急に彼が振り向いた。

あっ……睨んでたのバレた?

「言い忘れたけど…」

え?まだあるの?

「再来週イギリスに須崎と出張するから」

イギリス出張?

本当に?

やったあ。少しはこの腹黒王子から解放される!

俊の言葉に嬉しくて顔がほころびそうになる。

だが、平常心、平常心と心の中で唱え、身をひきしめる。

「頬、緩んでるよ。嬉しそうだね」

俊に指摘されて私は慌てて頬を押さえる。
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