腹黒王子の取扱説明書
俺は洗面所に行きドライヤーを取ってくると彼女の髪を乾かし始めた。

「麗奈……こんなんじゃまた熱が出るよ」

「……いいの」

「良くないよ」

「……私みたいな冷たい女、きっと悪魔にだって嫌われるわ。親が死んでも泣かないんだもの。気丈にしてるわけでもない。全然悲しくなんかない。むしろホッとしてる。酷い女でしょう?」

麗奈が嘲るようにフフっと笑う。

気が動転していて、自分でもどうしていいのかわからないのかもしれない。

「本当に酷い女ならそんな事言わないよ」

麗奈の言葉を否定しながら俺は彼女の肩に手を置く。

……冷たい。

シャワーを浴びたばかりなのに……。

「まさかと思うけど、水のシャワー浴びた?」

「……わからない。水…だったかもしれない」

でも、どうでもいい……そんな麗奈の声が聞こえそうだった。

魂の抜けたような声。

火の中でも構わず歩いて行きそうだ。
< 199 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop