腹黒王子の取扱説明書
「美月ちゃんは、俺と離れるよりもお弁当と離れる方が辛そうだな」

先輩が声を出して笑いながら、美月をからかう。

彼はほんの一瞬私の方を見て、爆弾発言をした。

「……実は大学病院には戻らず、離島に行くことになったんだ」

離島?そんなの聞いてない。

お茶の準備をしていると、急須を持った手が一瞬止まる。

「離島ってどこですか?」

麗奈が秘書室のテーブルの上にお弁当を並べながら、先輩に視線を向ける。

「沖縄の宮古島。海がきれいなとこだよ」

先輩が目を細めながらにっこり微笑む。

それから、ランチの間何を話したのか覚えていない。

麗奈と美月が後片付けのために席を立つと、先輩が私に耳打ちしてきた。

「今日もいつものところで」

私の目を見てフッと微笑すると、彼は席を立って医務室に行ってしまった。

彼が消えたドアをじっと見る。

私の返事も聞かないで行っちゃうなんて……狡い人。
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