腹黒王子の取扱説明書
「……疲れてるのかな」

今日の私はおかしい。

仕事も全然身が入らなかったし、普段では考えられないケアレスミスを連発して美月に笑われた。

「杏子、どうした?ボーッとして」

不意に先輩に声をかけられる。

「あっ、ちょっと考え事してただけ」

顔を上げてそう答えると、視界にあのブーケが入ってくる。

「モテる男は大変ね」

ブーケを忌々しげにじっと見つめ、冷ややかに呟く。

「ああ、この花か。俺には似合わないな」

先輩がチラリとブーケに目をやり、困ったように笑う。

その顔がおかしくて、ちょっとムッとしていたのに思わず吹き出してしまった。

「そうね。先輩には聴診器がお似合いよ」

「その先輩って言うの、いい加減どうにかならないか?」

「だって、先輩は先輩でしょう?」

先輩はテーブルの上に置いてあったレシートを慣れた仕草で手に取ると、私に顔を近づけて耳元で囁いた。

「ベッドの中では亮なのにな」

先輩の目が悪戯っぽく笑う。
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