腹黒王子の取扱説明書
「先輩!」

私は顔を赤面させながらキッと先輩を睨み付けた。

でも、彼は声を上げて笑うばかりで全然反省していない。

素早く支払いを済ませた先輩は、私の手を握り店を出るとタクシーを呼んだ。

「広尾まで」

タクシーに乗り込むと、先輩が行き先を告げた。

広尾って……まさか。

てっきり今日もいつものホテルだと思ってたのに……どうして?

「たまには良いだろ、俺の家。明日は土曜だしな」

先輩は私の戸惑いに気づいたのか、私の目をじっと見つめてくる。

来週沖縄に行くのに、どうして?

私は……遠距離恋愛なんて面倒な事は望まない。

先輩だって同じはず……。

「杏子は今日が最後って思ってるかもしれないが俺は違う」

いつになく真剣な眼差し。

ああ……バスケの試合中に見た……あの熱い目と一緒だ。

「でも……遠距離なんて……」

先輩らしくない。

気楽な関係だったはずなのに……。

「最近気づいた。俺って意外と執着するんだよ」

先輩が私の手をぎゅっと握る。

タクシーが先輩のマンションの前で停車すると、彼はカードで支払いを済ませて、私の手をつかんで足早にマンションの中に入る。
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